お客様の望みを聞き届けることが大切
先天性の病気を患い、生まれながらにして余命一年と宣告されたお子様のお葬式のことは、今でも後悔とともに思い出されます。その男の子は宣告にも関わらず4年間頑張り、メモリアルコーナーや祭壇には、お子様が好きだったという超合金のおもちゃをたくさん飾りました。納棺の儀の時、お母様から「おもちゃを入れられますか」とお願いをされたのです。当時、葬儀担当者として駆け出し1年目だった私は、その斎場の規制が厳しかったこともあり、丁重に理由を説明してお断りいたしました。大きいものから小さいものまで、全て断ってしまったのです。翌日、お別れの儀の時、お母様は「これなら入れられますか」と、お手製のお弁当を私に見せてくださいました。「大丈夫です」とお答えしながら、マニュアル通り進めてしまったこと、そしてお母様の想いに応えられなかったことを後悔いたしました。今にして思えば、納棺時に一度おもちゃを入れておき、斎場には前もって、お棺の中に超合金が入っている旨を申し送りしておけば済む話だったかもしれません。葬祭スタッフである以上、故人様・ご家族様のご希望を、何よりも最優先で考えなければいけないということを教えられました。それ以来、ご家族様が何を望まれているのか、しっかりとお話を聞き、ご希望に沿った提案をすることを一番大切にしております。
私は33歳の時に転職して、葬儀業界に入りました。この仕事に就いてみて、自身の未熟さ、至らなさを実感いたしました。緊急、困惑、悲嘆という状況におかれた方の想いを感じ取る力の無さを痛感したため、ご家族様の心に寄り添い、その方の立場になって物事を考えるよう努めてきました。これまで多くの人との関わりを持たせていただいた中で、あるご葬儀で喪主を務められた初老の男性からいただいた一言は忘れられません。その喪主様は私の働きに対し、「会社が大きくなったとしても、今と同じ仕事をしてください」と仰ってくださいました。その一言は励みになるとともに、自戒の言葉として胸に留めるようにしております。この先、どんなにご葬儀の件数やお申し込みが増えたとしても、現状に決して奢らず、真心を込めてひとつひとつのお葬式に向き合っていきたいと思います。
最近では、ご葬儀の小規模化が進んでおります。それに伴い、時流に沿った会場の整備と、そのPRに努めております。葬儀スタッフは、非常に奥の深い仕事です。これからもこの仕事を追求し、どなた様も満足できるようなお葬式をお手伝いしてまいりたいと思います。